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岡山県西部を流れる高梁川は、岡山県と鳥取県境の新見市花見山(標高1,188m)を源に111kmを下り、瀬戸内海へと注ぎこまれています。
高梁川流域は、新見市・高梁市・総社市・早島町・矢掛町・井原市・浅口市・里庄町・笠岡市・倉敷市の7市3町で構成され、豊かな水と肥沃な土壌に恵まれた地域です。
その恵まれた自然環境のもと、古くから人々の暮らしを支え、多彩な食文化が育まれてきました。



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南北を結ぶ高梁川とその支流では、かつて高瀬舟と呼ばれる小型の船が行き交っていました。室町時代に始まり、江戸時代に最盛期を迎え、大正末ごろまで活躍したといわれています。
高瀬舟によって、イワシなどの瀬戸内海の海産物をはじめ、塩や砂糖といった調味料、米や薪炭などが運ばれました。こうした河川交通は、流域の人々の暮らしを潤すとともに、地域の食文化の発展にも大きな役割を果たします。

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高梁川流域は南北に長く、気候や風土が地域ごとに異なるため、栽培される農産品は多種多様です。四季折々に実る食材が、地域の食文化を豊かに彩っています。
岡山といえば、まず思い浮かぶのが果物ではないでしょうか。
“果物の女王”と呼ばれる「マスカット・オブ・アレキサンドリア」は、エメラルドグリーンの果粒と芳醇な香りが魅力。種を残して栽培することでぶどう本来の風味を引き出しており、全国の約90%が岡山で生産されています。
また、種なしで皮ごと食べられる「シャインマスカット」や皮のパリッとした食感が特徴の「瀬戸ジャイアンツ」など、新しい品種も人気を集めています。贈答品や自家用としても非常に人気のある「ピオーネ」は、黒色の大粒のぶどうで、甘みと風味が豊かでありながら、適度な酸味も楽しめる品種です。特に、新見市で栽培されるピオーネは「黒いダイヤ」と呼ばれ、大粒で甘みが強いのが特徴です。

岡山の白桃栽培は、明治時代に本格化されたといわれています。
太陽の光を直接浴びせない“袋かけ栽培”により、透き通るように白く上品な白桃の果実が育ちます。
やわらかな食感で酸味が少なく果汁が豊富な「白鳳」、とろけるようにやわらかくて非常に甘い「清水白桃」、強い甘みとほどよい酸味と黄金色の果皮が美しい「黄金桃」など、6月から9月にかけて多彩な品種が出荷されます。


また、高梁川の清流と肥沃な土壌は、おいしい米作りにも適した地域です。
つやがあり粘りの強い「ヒノヒカリ」、粘りと甘みのある「きぬむすめ」などが栽培され、総社市の備中国分寺周辺では、玄米の種皮に赤い色素を含んだ「赤米」も生産されています。赤米は白米に比べ、たんぱく質、ミネラル、ビタミンをより多く含むことから近年、健康食としても注目されています。
古くから酒造りの文化も根付いており、「備中杜氏」と呼ばれる優れた職人たちが酒造技術を受け継いできました。
なかでも、栽培が難しく“幻の酒米”とよばれる「雄町米」は、全国の生産量の90%以上を岡山県産が占めています。芳醇な香りとまろやかな旨みをもつ日本酒を生みだす酒米として知られ、備中地域の酒造りに欠かせません。
高梁川流域では、おいしい酒造りに必要な「よい米」「よい水」「よい技」の三拍子が揃っているため、旨口でやわらかな飲み口の酒が多く生み出されています。瀬戸内の肴ともよく調和し、上品な味わいが持ち味です。

また、山の恵みだけでなく、瀬戸内海に面した地域では豊かな海の幸にも恵まれています。
倉敷市下津井の沖で育つ「真だこ」は、清流にもまれて足が太く短く、噛むほどに甘みが広がります。
浅口市の「寄島カキ」は雑味が少なく濃厚で、加熱しても縮みにくいのが特徴です。高梁川からの栄養分が潮流に乗って寄島のカキ漁場に届き、最高の栄養環境のもとで育まれています。


さらに、豊かな自然環境を活かした畜産もさかんです。
岡山県の和牛ブランドとして有名な新見市の「千屋牛」は、“日本最古の蔓牛”の系統をひき、きめ細かな霜降りと肉の甘みに特徴があり、柔らかく上質な味わいを楽しめます。
高梁市の「備中牛」は、統一された飼料と衛生的な牛舎で飼育され、格付け評価が3等級以上の黒毛和牛です。きめ細やかなサシが入り、深い味わいの赤身と独特な旨みをもちます。
さらに笠岡干拓地で瀬戸内海の潮風をうけながら丁寧に育てられた雌牛「瀬戸の姫」は、赤身の濃厚さや脂の甘みが絶妙です。
それぞれの風土を活かしたブランド牛として、高く評価されています。
夏には果物が食卓を彩り、冬には鍋に海の幸が並ぶ。
こうした恵みは、まさに「山から海へ」と続く高梁川がもたらした自然の賜物といえるでしょう。
流域を結ぶ水がもたらした食文化は、今も人々の暮らしの礎となっています。
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