巡・金田一耕助の小径 ミステリーラリー真備編2010
真備ふるさと歴史館
弁天島・大池
10月1日(金)~12月20日(月)まで開催中のミステリーラリー真備編に挑戦してみました。「本陣殺人事件」の軌跡を歩いてみようということで清音駅に行ってみました。
清音駅(総社市)をスタート。ラリーマップを用意し、チェックポイントを探します。
名刺サイズのチェックシートがどこに貼ってあるかを見つけます。
真備町には「本陣殺人事件」の舞台となった場所がたくさんあります。
JR倉敷駅からJR伯備線に乗り、清音駅で降ります。
川辺橋をわたり全長7kmの散策コースは歩いて2~3時間、レンタサイクルも清音駅前に数台あります。金田一耕助が「清一駅」に降り立ったのは昭和12年11月27日です。
清音駅を降りるとまず(旧)川辺橋を渡ります。国道486号線と平行して歩行者・自転車専用橋があります。川辺橋からの高梁川(第一級河川)の眺めも心和みます。
(旧)川辺橋は思っていたより長く、高梁川の大きさを感じさせます。
中間地点は真備町(倉敷市)と清音駅(総社市)との市境になります。川舟が浮かび漁をしています。
(旧)川辺橋を渡り土手から側道に下ります。
何か見えてきました。
石の道しるべです。「史跡 山陽街道一里塚」と書かれています。
ラリーマップを見ながらチェックポイントを探します。行き過ぎてはまた戻ります。
白木静子の乗った乗合自動車が事故を起こしたのはこの辺りです。
川辺本陣跡までたどり着き、たばこ屋を探します。金田一耕助と磯川警部が聞き込みをした「角の煙草屋」を見つけました。
その向こうには艮御崎神社の石の鳥居が見つかりました。チェックポイントがどこに貼ってあるかキョロキョロ探します。上のほうに貼ってあったり、下の方に貼ってあったり名刺サイズのシールを探すのも一苦労です。
境内の中を一周しました。
「吉備津神社本殿の丑寅の方向に艮宮があり温羅が祭られ、たたりの神として恐れられている。艮神社や御崎神社は吉備津神社系の神社名なので、艮御崎神社も吉備津神社系であるそうです」
真備ふるさと歴史館
(正史の書斎の復元コーナー)
真備ふるさと歴史館にはたくさんの文献資料が特別展示されています。
岡田村で過ごした期間、正史は現地の人々と積極的に交流し、会話の中から創作のヒントを得ていた。生活になじみ、自然にも親しんでいた正史は地元への貢献を心がけ、さまざまな協力を行った。
当時岡山県吉備郡岡田村字桜(現在の倉敷市真備町岡田)という農村のどまんなかに疎開して私はそこで終戦を迎え、まことに意気軒昴たるものがあった」というように岡田村での生活は正史にとって再出発にむけたよき充電期間となったようである。(資料より)
「真備ふるさと歴史館」を出ると岡田大池を探します。
この辺りは横溝正史が小説に行き詰るとよく散歩していたところで、伸びた髪をかきむしりながらぶつぶつと独り言を言いながら歩いていたそうです。 その頃にタイムスリップしたような、目の前に横溝正史が歩いているようなそんな錯覚にもとらわれます。
(大池の弁天様)
疎開宅から岡田大池をめぐるコースが横溝正史の散策コースでした。
横溝正史疎開宅
辺りは静まりかえり、玄関を入ると奥からは笑い声が・・・当時のそのままの雰囲気がいまだ残っているような・・・・この田舎の一軒家からミステリーの大作が生まれ、この地で田舎生活を送ったからこそ・・・
おそらく私は都会を舞台にした、ギスギスとした、翻案まがいの小説しか書けなかったであろう。光枝の世話してくれた岡田村字桜に居を構えていたからこそ、「本陣殺人事件」が書け、「獄門島」の構想が練られたのである。
「書かでもの記」 徳間書店『横溝正史の秘密』 角川書店『横溝正史自伝的随筆集』
(千光寺)
☆<岡山を舞台とした必要性とは何か・・・☆
岡山の親戚(義姉)から、家があるからぜひ疎開してくるようにとの親切な勧誘をうけた。岡山-瀬戸内海-孤島ととっさに脳裡でむすびついてきたからなのである。
「片隅の楽園」講談社 『探偵小説五十年』
思えばああいう農村へ疎開しなければ、私に同じトリックやストーリーは思いつけても「本陣殺人事件」は書けなかったであろう。
「本格探偵小説への転機」同上
岡山県の片田舎で、「蝶々殺人事件」と平行して、「本陣殺人事件」を書いていたころが、私にとっては、いちばん幸福な時期だったのではないか。(田舎の良さが自分を救ってくれた)
「幸福とは」 講談社『探偵小説五十年』
(三宅商店)
この村の旧本陣一家に起こった殺人事件を、村の人々から聞きつたえるまま、小説に書きつづっているところであった。しかもその小説は当時まだ雑誌に連載中であった。ところが、その小説---と、いうよりも、その事件の主人公というのが即ち金田一耕助であった。(中略)
村の人々の語るところを土台として、それにこうもあろうかという、自分の想像を付け加えて書いていたのに過ぎなかった。
「黒猫亭事件」はしがき
(一柳家のモデルの旧家があったとされる屋敷跡 付近)
(上記記載写真は10/13・19に撮影したものです)
ミステリーラリーの下敷きを片手に夢中で歩き、チェックポイントを探した2日間。
真備ふるさと歴史館や横溝正史疎開宅、三宅商店で当時のことをよく知る地元の人からゆっくりお話を聞いてみるのも横溝正史に触れる一番の近道かもしれません。
今回は急ぎ足のミステリーラリーとなりましたがまた時間をかけて訪ねてみたいものです。