児島のジーンズ
倉敷市児島は古くから"繊維の街"として栄えていました。
江戸時代初期に始まった綿栽培が明治になって一度は廃れたものの、それまでの「織り」や「加工」の技を活かし、大正から昭和にかけて足袋、学生服の生産量が全国一になるまでに発展しました。
ジーンズミュージアム
そして、日本で初めて児島で産声を上げた"国産ジーンズ"。
この第1号誕生から40年以上経つ今でも、国産ジーンズの発祥地・児島からさまざまなジーンズが全国に向けて発信されており、その技術は世界からも注目を浴びています。
そんなジーンズの歴史が学べる国内唯一のジーンズ資料館「ジーンズミュージアム」が児島にあります。
世界にひとつだけのジーンズ
平成18年度倉敷ブランドに認定された"オーダージーンズ"。
実はこのジーンズ、「自分に合うジーンズを作ってほしい」という一本の電話からスタートしました。
まずは試着サンプルでサイズを決めて採寸、それから生地やボタン、リベット、ステッチ糸を選びます。ポケット部分に倉敷帆布や和柄の生地をポイントで使うなど、"世界にひとつだけのジーンズ"が作れます。
ジーンズを支えてきた貴重な品々
ジーンズミュージアムにはオーダージーンズのほか、ジーンズの歩みとともに展示された歴史的な品々が所狭しとならびます。
1850年代のインディアンレプリカやバッファローの頭、糸つむぎ機や綿くり機、1880年代のアメリカ製ミシンなどインパクトがあって時代を感じさせる貴重な物ばかり。
このミュージアムを入ると正面にある年代物のミシンは今から60年前のものですが、1回で5行程を一気に縫えて丈夫に仕上がる珍しいもの。もちろん、まだ使えるそうです。
いかに早く縫っていくかを求めて改造されていったミシンは巻き縫いミシンなど時代によって移り変わり進化していきました。
ジーンズのブルー
ジーンズや洋服のもととなる綿・原綿は紡ぐと一本の糸になります。
この糸を使い、たて糸とよこ糸からなる生地を作ります。
生地のたて糸をインディゴ染めしてジーンズになるのです。
ブルーに染めるには、大体、10回染めが主流です。
また、先染めといって糸から染めると裏地は白ですが、後染めといって生地から染めると裏地もブルーに染まります。
この色によってカラーデニムの色も決まります。
この染めには灰汁と日本酒、石灰を使って発酵させた可「灰汁建て」という昔ならではの手法で建てられ、藍を使用した「藍染め」があります。
この藍染め体験ができる工房が児島駅近くにあるので覗いてみました。
藍染体験
暖簾をくぐって中に入ると藍の葉が発酵した香りが漂っている作業場が目の前にあります。
藍染め体験は、ここで最初に藍染めの説明を受けます。
次に、テーブルの上で「板じめ」といって生地の上と下に板をはさんで染めたり、「絞り」といってかぼちゃやボールを布でつつんで染めたりします。
そして、いよいよ奥の工房へ。まず、水で洗った布を藍の液につけます。茶褐色の液体が大量に入った瓶の中でもみこむようにして約1分間染めます。染めたものを瓶から上げて水分を絞り空気中の酸素に触れさせて酸化します。
ここまでの工程を何度か繰り返すことでだんだん色が染まっていきます。
薄めに仕上げたい場合は少なく、濃いめに仕上げたい場合は回を重ねていきます。
藍染め体験はおよそ1~2時間くらいで終了します。
日・祝日以外は体験できるそうですが、予約が必要になります。
体験時には、ビニールエプロンとゴム手袋を貸してもらえるので安心です。
また、藍染は染め物ですが色落ちや色移りがほとんどしないのも安心です。
倉敷ブランド
藍染めには手ぬぐいやTシャツのほか、もちろん、ジーンズもあります。合成インディゴのブルーとはひと味違った天然藍のブルーを追求し、「染め」も「織り」も手作業からなる「桃太郎ジーンズ」という岡山県倉敷市児島発のデニムです。
オーダージーンズ同様、倉敷ブランドに認定されたここならではのもの。
アウトレット
ジーンズの種類はデニム生地やデザイン、シルエットによって数多くあります。
たとえば、ブーツを履いても形がくずれないように裾が広がっている"ブーツカット"、ブーツカットに似ているが、太ももはタイトでひざ下からストレートになっている"バギーパンツ"、ブーツイン用で足のラインが細くきれいに見えるストレッチ素材の"スキニーデニム"のほか、カラーデニムやオーバーオール、Gジャン、デニムのワンピースから帽子やバックといった小物まで。
これらはジーンズミュージアム近くのアウトレットでゲットできます。
ジーンズが似合う著名人に贈られる「ベストジーニスト賞」は1984年に日本ジーンズ協議会主催ではじまり、その本部はここ児島にあります。
ジーニストたちがこだわりのジーンズを求めてジーンズの聖地を訪れることもしばしば。
もともと1926年以降、アメリカから日本に入ってきたジーンズが、現在、世界に誇れる縫製技術、加工技術でデニム生地の生産量が世界一の倉敷市児島からアメリカへ向けて出荷されているのです。
日常生活のあらゆるシーンで活躍するジーンズ
仕事やデートや家事、育児、畑仕事などなど。普段、何気なく身に着けていてとりたてて考えることはないかもしれませんが、時には、ジーンズミュージアムや藍染め体験などを通して、その歴史や技術に触れてみるのもいいものです。
その上で履いてみると感慨深いのと同時になんだかフレッシュな気分にもなります。
定番のTシャツにブルージーンズやネルシャツにブラックジーンズ、タイトなものを腰で履いてブーツインしたり、デニム地のミニスカートと甘めのブラウスで合わせてカッコカワイイ系でまとめたり・・・ジーンズスタイルは自分次第。自由で自然体が気持ちいいのです。
アナタなりの着こなしでこれまで以上に、ジーンズを、思い存分、楽しみましょう。