船穂のスイートピー栽培
2月、3月という季節は、野山に花らしい花はなく1年を通してもっともさびしい時期です。
そんななか倉敷市船穂地区のハウスではスイートピーの花が、今が盛りととても元気です。
全国有数のスイートピー産地船穂地区にスイートピーを見に行ってきました。
花の品質は日本一
倉敷市船穂地区は果物の女王マスカットの栽培でも全国一の産地。
その陰で忘れられがちなのがスイートピーの栽培です。
船穂地区でスイートピーの栽培が盛んなのは、陽あたりがよくて、朝晩が適度に冷えるという気候がスイートピーに適しているからだそうで、現在21軒の農家が取り組んでいます。その面積は全国で3番目。ところが出荷量は全国で2番目、そして花の品質となると全国1番と言われています。
丘陵地のハウス栽培
船穂町花き部会副会長の井上学さんのハウスを訪ね、元気よく咲くスイートピーを見せていただきました。丘陵地の斜面のあちこちにハウスが並ぶなか訪ねたハウスはめずらしく平地にあって、ハウス内では赤、白、ピンクなどの花が真っ盛りです。
井上さん宅ではこうしたハウスあわせて50アールで20種のスイートピーを栽培しています。
まるで蝶々が飛ぶよう
スイートピーはマメ科の一年草つる草で、寒さに強い花です。ハウス栽培だと9月に種を蒔くと10月末には花が咲きはじめます。
そして翌年の4月ごろまで収穫できるという息の永い花です。
そのわけは、つる草の茎がどんどん伸びるにつれてつぎつぎに茎の脇から花のつく枝を出すからです。
スイートピーのよさは、花の色が豊富なこと。
船穂地区では現在35種ものさまざまな色があります。
そして花の可憐さ。花びらはまるで蝶々が飛んでいるよう。
華やぎがあっても清らかさのある、まことに春を迎えるにふさわしい花です。
デリケートな花
栽培農家では1週間のうち、月水土に摘み取って火木日に出荷します。
摘み取りの日は朝8時にハウスに入り、1本1本丁寧に摘み取ります。
花を傷つけないよう常に気をつけます。
摘み取った花は持ち帰って花が長持ちするよう液剤に浸し、つぎに選花選別をして50本づつの出荷用花束にしていきます。
夜間はたっぷりの水を与え、翌朝、箱詰めにしJAの集荷センターに持ち込みます。
これがスイートピー栽培のサイクルですが、休む暇もない根気のいる仕事です。
旅立ちの花
出荷先はほぼ全国、北海道にも東北にも、もちろん首都圏にも運ばれて行きます。
花のない季節、色がかわいくて長持ちするスイートピーはどこでも人気です。
ちなみに、花言葉は「門出」「旅立ち」などだそうで、つまり、春先の卒業、就職、入学シーズンになくてはならない花となります。