産業観光体験
倉敷市水島にある、水島コンビナート。東西約9km、南北約6km、総面積2,503haの規模を誇る、日本でも屈指の工業地帯です。
もともとは新田地帯で、戦後の食糧増産のため農林省が福田・連島地区の農業開拓にかかり、広大な農地、つまり、工業基盤のベースとなる地を築いたのがはじまりでした。
現在、石油化学、石油精製、液化ガス、製鉄・非鉄、鉄鋼、セメント加工、銅材加工、火力発電、自動車・各種機械、電力など、100近くの企業で形成されています。
なかでも、世界最大・最強で最高水準の技術力と生産力を誇る製鉄所で産業観光体験ができるとのことで覗いてみました。
最初に15分くらいのビデオで予習をして、いざスタート!こちらは粗鋼生産量が世界で最も多く、約1,000万平方メートルを超える広い敷地と深い港湾にあります。工業地帯全体の約50%を占める(東京ドーム約250個分)のスペース内にある見学コースをまずは車でまわります。
敷地内には信号や線路、踏み切りがあり小さな街のようです。見渡すとジェットコースターのような原料を運ぶ機械や100mくらいある高炉など、普段、目にすることが出来ない物体が次から次へと飛び込んできて、なんだか遊園地のようにも思えますし、異空間に迷い込んだかのようにも感じられます。
しばらくすると見えてくる三角の山は原料の山で赤茶けた色が鉄鉱石、黒っぽい山は石灰です。この鉄鉱石と石灰が鉄の原料となります。
そびえ建つ世界最大級の高炉が4基あり、オレンジ色のドロドロ流れてくる液体はいろんな不純物を取り除き鋼になります。これが、"鉄が生まれる瞬間"です。
実際に工程を見られる「厚板工場」に到着したら車をおりて、いよいよ工場内を見学していきます。ここでは世界最大級の広幅厚板が作られています。
階段を上っていき、なかにはベルトコンベアーの上をさまざまな機械が乗って動いている横に人がひとり通れるくらいの幅のスペースがあります。
このキャットウォークが工程を見るための見学コースになっています。
入ってすぐ、物凄い音と振動に驚かされますが、これは加熱炉で冷めた熱をあたためた鉄板がローラーの上を移動する音と振動です。
しばらくすると体が少しづつ熱くなってきます。特に顔が火照ってきます。
1000度以上もある鉄のかたまり、つまり、厚板のそばを通るわけだから熱くなるのは当たり前ですが、一瞬にしてポーッとなるので少しびっくりします。
場所によっては40度近くなるそうです。
次に蒸気機関車のような「シューッ」という音と蒸気が上がっているのが見られます。これは、デスケーラーといって熱い鉄板に水をまくとその蒸気が上がります。
そして、圧延機で厚板をうすく延ばしていきます。鉄の板が行ったり来たりしながらどんどんうすく延びていきます。最初、オレンジだったのが白っぽく見えたと思ったら今度は銀色のように見えますが、これが鉄本来の色です。このように工程によって色がみるみる変化していくのがわかります。
こうして、スクラップされた鉄はここから10時間くらいかけて冷まします。
と、見学コースはここまでになります。
出た所で先程の車に乗り、来た道ではなく敷地内の西側にある高梁川沿いを戻っていきます。左側には美しい川が流れており、右に目をやると鉄づくりに命をかける熱い男たちの美しい姿があります。
現在は、工場内の機械もシステム化され、操作は別室でしているそうですが、昔は人の手によって作られていたのかと思うと、見学中に顔が熱くなった以上に胸に熱いものが込み上げてきます。
私たちの生活のなかで家電製品や電車、自動車、橋など形を変えて生きている"鉄"たちとそれにかかわる人々にあらためて感謝したい気持ちでいっぱいになりました。
道中、粉じんが舞わないように水を巻く車が走っていたり、緑がいたるところに植えられていたり、地球や人にやさしい配慮と環境対策がされているので安心です。時々、工業地帯内というのを忘れてしまうほど。
倉敷美観地区から鷲羽山・瀬戸大橋へと向かう途中に立ち寄って、ダイナミックなコンビナートの最先端技術や最新設備の生産工程の見学をしてみるのもいいかもしれません。なお、定員が10名未満だと行われない場合がありますので、あらかじめ確認をした方がいいようです。
私たちの生活に欠かせない"ライフラインのもと"ともいえる技術の基幹が結集された一帯。巨大なテーマパークのごとく突如現れるそのエリアは、まるで異次元空間のようで、入り口に立った瞬間からワクワクとドキドキが止まりません。そして、その先にある感動-。子供でも大人でも老若男女かかわらず、この産業体験を通して、きっと、何か得るものがあるはず!
この未知なる異空間体験をぜひ、一度、味わってみてはいかがでしょう?