旧野﨑家住宅
倉敷市児島味野の<旧野﨑家住宅>は江戸時代後期に新田開発と製塩業で大成した野﨑武左衛門が築いた住宅です。
武左衛門は足袋の製造販売で富みを蓄え、それを元手に児島味野地区などで塩田開発を手がけ、その生涯で161町もの入り浜式塩田を築き「塩田王」と呼ばれています。
武左衛門が事業の拡大とともに築き上げていった住宅は、現在も建物と庭園がほぼ当時のまま保存されています。
全国的にも珍しいことで平成18年に国の重要文化財に指定されました。
静寂な空間
<旧野﨑家住宅>は、敷地面積およそ3,000坪と広大で、土蔵なども含めた建物延床面積1,000坪近くあります。
現在、受付となっている長屋門から一歩足を踏みいれますと、時が止まったかのような静寂な空間です。
長屋門の隣が通常は閉ざされているお成門です。
岡山藩池田侯など貴賓の出入り口として使われました。
表書院
表書院は野﨑家の中心となる建物です。貴賓の応接として使われていました。欄間は波のうねりを象徴し黒の縁取りをしたデザインです。シンプルですが美しい。
天井から吊るされたランプもレトロでかわいらしく感じます。
枯山水の庭園
部屋から眺めることを中心に考えられた枯山水の庭園は、四季を通じての美しさがあります。
江戸時代から咲き続けているサツキツツジは枝ぶりがややおとろえているとはいえ毎年、見事に花を咲かせ訪れる人の目を楽しませています。石組みも大きさがバランスよく配置されています。
お駕籠石
中でも、ひときわ大きな石が、池田侯が訪れた時、殿様の駕籠が置かれたお駕籠石で、武左衛門が最初に築いた野﨑浜塩田によく似ています。縁先の手水場には、水の音が耳に心地よく響く水琴窟があります。
白壁の土蔵群
長屋門を入って右手側に白壁の土蔵群が規則正しく立ち並んでいて調和のとれた美しさをかもしだしています。
商人のお城と言われた蔵が全部で6つあり当時からの隆盛振りが手にとるように分かります。
土蔵群の一部は現在、展示館として使われています。
第一展示館では製塩の歴史を分かりやすく紹介し、第二展示館では企画展・特別展などさまざまな野﨑家に縁のあるものを展示しています。
また製塩業の本家本元だけに、<旧野﨑家住宅>では敷地内に<塩づくり体験館>を開設し入館者に塩づくりを体験してもらっています。
夏休みは特に多くの小学生が体験に訪れ賑わいます。
?暇堂
一方、<旧野﨑家住宅>から歩いて一分ほど離れた場所にある野﨑家の別邸<?暇堂>は、明治時代、野﨑家の三代目である野﨑武吉郎によって建てられました。
武吉郎は、貴族院議員を勤めたこともあって中央の客人を迎える迎賓館のような建物が必要だったのです。
主屋は入母屋造の式台玄関を構え、百畳敷の大広間があります。
普段は非公開の<?暇堂>ですが、ひな祭りの季節になると市民が家庭からお雛様を持ち寄り、百畳敷の大広間の壁にそってぐるりと飾られます。
御殿雛、七段飾りの雛人形どれも娘の成長を願う祖父母や両親のあたたかな思いにつつまれた素敵な雛人形です。
他にも雛祭りの催しとしては、<旧野﨑家住宅>の第二展示館において、江戸時代後期に、池田藩主から拝領した高さおよそ80センチもある全国的にも珍しい享保雛が飾られます。
この他、古今雛など野﨑家伝来の雛人形やお道具類が飾られます。
期間中は、さまざまなイベントも企画され県内外から多くの観光客が訪れ華やかな雰囲気に包まれます。