倉敷夜間景観照明
倉敷市の観光名所である美観地区。このエリアはその名の通り、江戸時代以来、美しい景観をそのままに、世代を超えて守り続けられ、今に息づいています。
この美観地区が平成17年より夜間にライトアップされるようになりました。
夜の美観地区を魅力的に演出するとともに、歩行者の安全と安心を確保することを目的としたのがその始まりです。
当初、夜間照明は美観地区の中心を流れる倉敷川に沿って設置されており、西側から入り南側へ抜けていく美観地区内のみでしたが、平成21年までの5カ年計画のもと年々エリアが拡大されました。
そのルートを歩きながらビューポイントとともに紹介していきましょう。
まず、美観地区西側の入り口からスタートします。最初に左手に現れるのは、白い壁が照明によりさらに白く感じられる「大原邸」です。その向いにクリーム色に浮かび上がり昼にも増して迫力のあるどっしりとしたギリシャ神殿風の建物が「大原美術館」です。こちらのファサードは圧巻です。
この美術館の角を右に入った通りではボラード灯が石垣を照らすことにより、道行く人の足下が見えやすくなるといった配慮がなされています。
この右手に見える日本庭園「新渓園」の照明は緑が映える春夏バージョンと紅葉の赤や黄が美しい秋冬バージョンがあります。さらに、「大原美術館」の屋上にある月明かり照明はうすく青みがかった月に照らされているように浮かび上がっていて幻想的です。
通りを戻ると正面にある倉敷川の上に架けられた「今橋」と中央にある「中橋」には歩行者の安全な通行が確保できるよう明るくライトが当たっています。
この「中橋」を左に見て右の角にある白とグレーの2階建ての洋館「くらしき館」(観光案内所)は白いカーテン越しに見える室内照明と外部の壁面照明が見事にやわらかい光を放っています。
そのまま倉敷川を左に見ながら進むと右手にある「民藝館」には黒い屋根から白い壁に向けられた軒下照明による灯りがぼんやりと丸く広がって見えます。
その先の「高砂橋」を渡り、左方向に歩いていると右手に「石畳どおり」があります。
少し足下がぐらつきそうな石畳も安心して夜間歩行ができるように両サイドの防犯灯が煌々とともされています。
そのまま、まっすぐ進みアイビースクエアの門をくぐると、左手に「児島虎次郎記念館」があります。赤いレンガと黒い屋根が、また、その先の左には赤いレンガと白い壁がくっきりと、まさに"照明が織り成す、和と洋のコラボレーション"といったアートが満喫できます。
この近辺にはベンチがあるのでひと休みするのもいいでしょう。
そして、来た道を戻ると、先ほど歩いて見てきた建物が対岸に並び、その姿が倉敷川の水面にゆらゆらと揺れながらもくっきりと写っていて絵画のようです。
川に沿って歩いていくと、よく観光パンフレットなどでも見かけたことのあるような、古式ゆかしき旅館が建ち並ぶ界隈に出くわします。倉敷ならではの情緒が夜でも充分感じられます。
そのまま、大原美術館を対岸越しに見ながら右に一本路地を入ると右手の角にこれまたレトロな洋館があります。この建物、実は銀行なんですが、赤や青、紫、黄、緑…と彩り豊かな8枚からなるステンドグラスや天井への照明がより絶妙です。芸術作品のようで魅せられてしまいます。倉敷美観地区近辺は景観を損ねてはいけないので銀行までもがその鑑賞の対象となっているのです。
この本町通りにも美観地区のメイン通りと同じく道路の両サイドに街路灯や矢掛石で作られたボラード照明灯、軒下照明灯がつけられており、夜の散策も安心して楽しめます。
夜間照明ルート紹介はこのあたりでおしまいとしましょう。
今回紹介した道順は美観地区玄関からスタートしましたが、回り方や楽しみ方は人それぞれですので気の向くまま、導かれるままに進んでください。
昼間の景観と同様に夜の美観地区も楽しめるよう、照明器具は極力視界から外すよう施されていたり、倉敷川沿いにある景観街路灯は白壁を照らす部分と常夜灯の部分の2階建てとなっていたり、さまざまな工夫がなされています。
そのすべては東京タワーなどを手掛けた世界的に有名な照明デザイナー・石井幹子さんによるものです。その技術と芸術の粋を集めた灯りが蔵屋敷のなまこ壁や白壁を照らすと共にその中に息づく倉敷の生活や人々の心をも灯し続けています。ほんのりした灯りを観ているだけで不思議と温かい気持ちになれます。